IRの力で企業価値向上に貢献する ジェイ・フェニックス・リサーチ株式会社
在庫に振り回されて会社をつぶすのを避ける方法(中) において、在庫が本来の役割である、外的ショックを吸収する形で運用されているかどうかを分析する手法を紹介した。
今回は問題となっている場合の対処方法を考えて見たい。
私の経験によれば、米国の企業は在庫回転期間が安定していて、日本企業は安定していない場合が多い。
面白いことにある上場企業の方を話をしていたら、同じ企業でも米国の子会社は在庫回転期間が安定していて、日本企業は安定していないということであった。
米国企業は、実は在庫回転期間を重視するあまり、融通の利かない生産計画を立てているのかもしれない。
日本の場合は、「特急品」という名のもとに声の大きい顧客の生産を優先することがあるが、そういうことを米国の企業はしないのかもしれない。
しかし、それではQCD(Q:品質、C:コスト、D:納期)の視点でみるとD(デリバリー、納期)について、顧客ニーズに合致しないことが生じるのではないかと思ってしまう。
理想は特急品も対応でき、かつ、在庫回転期間が低位で安定している、しなやかな生産システムであろう。
そのためには、我々は5つの仕組みが必要であると考えている。
①計画生産から消費量の基づいた生産へ
計画がはずれるから在庫回転期間が安定しないという問題がある。したがって、実際の商品の販売量の情報をシェアして、その変動にリンクする形で生産すれば問題を解決することになる。ベンダーマネジメントインベントリーという概念である。製造業ではないがウォールマートが取り入れている在庫管理手法である。
②発注頻度の短縮化
1ヶ月や3ヵ月という期間でまとめて発注するため計画がずれることになる。消費量にもとづいてきめ細かく発注すれば、在庫が売上と連動しないリスクは回避できる。
③詰め込み生産の抑制
生産工程の最大生産量は、工程の中でもっとも時間のかかる工程に依存する。
例えば、以下の図を見よう、工程が1から5まである。工程4が一時間に5個しか生産できないため、この生産工程の生産量はどんなに他ががんばっても5である。しかし、通常、他の工程をそれにあわせて稼動させ、在庫財工程4の前だけにおけば、在庫は大幅に圧縮するが生産量は変わらない。
詰め込み生産を行うと、工程4の前だけでなく各工程の前にも在庫が積みあがる。ボトルネック以上は生産できないのは自明の理であるのだから、詰め込むことなく一時間5を投入すればよいのである。
すいている高速道路が結局はたくさんの自動車が走れるのと同じ原理を生産システムに導入すれば、リードタイムの圧縮は可能になるのである。
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④適切なバッファー管理
突然の需要拡大に応じるためには、ある程度のバッファーを持つ必要がある。工程5の後に過去の経験から見て、突然の需要拡大に備えてある程度バッファーを余裕をもって最終製品の在庫にもつことが重要である。そのバッファーの減り具合を常に見て、バッファーの減りが大きい場合は、特急需要が多いと考えて、在庫を増やすことが重要である。これをダイナミックに管理することができれば、柔軟な需要拡大への対応が可能となる。
⑤変動要素の集約
支店や販売拠点などに在庫が分散している場合はなるべく集中することが重要である。変動は集中することである程度分散効果が働いて、安定的になる。従って、ロジスティックス的には、地域ごとに在庫を集中管理する配送センターなどの活用も、変動に柔軟に対応するためには有用である。
ジェイフェニックスリサーチでは、①から⑤の仕組みをアドバイスするメニューを開発している。実際に①から⑤の施策とった場合に、どの程度の効果ができるのか過去のデータを分析する手法も確立している。
在庫に振り回和されていると思う企業は是非①から⑤の施策の導入を検討することを推奨したい。