IRの力で企業価値向上に貢献する ジェイ・フェニックス・リサーチ株式会社
宮下 修
J-Phoenix Research株式会社 代表取締役
株式会社ジェイ・フェニックスリサーチ(JPR)は、東証一部上場企業の株式会社スカラの子会社で、スカラが運営するAIを活用したエンゲージメントファンド(AIファンド)のアドバイザーを務めています。AIファンドは、機会に応じて適切なAIツールを使用し、過小評価されている企業の価値創造に注力しています。機会を体系的に見極めるためには、AIファンドの運営を成功させるために最も重要なキーコンセプトであると考えているGCC Manangement TM フレームワークを活用しています。GCC Manangement TM は「Growth、Connection、Confidence」の3つの要素で、株主価値と社員の幸せを体系化していく考え方で、社員、AIエンジニア、CxO、投資家など、誰もが容易に理解できるよう設計されています。また、 GCC Manangement TM はAIツールの「価値判断基準」として機能します。本レポートでは、GCC Manangement TM がどのように機能するかを説明しています。
AIファンドが投資した企業に関わる全てのステークホルダーとの共創を通じて、価値創造を支援することをミッションとしています。様々なステークホルダーの中でも、株主と従業員が最も重要なステークホルダーであると考えています。そして従業員の幸せとは、株主以外のステークホルダーである顧客、取引先、社会など、企業が事業を展開している他のステークホルダーの価値を表すものであると考えています。なぜならこれらのステークホルダーの幸せが、自己実現欲求、自尊心、帰属心、愛の欲求を満たし、従業員の幸せにつながると考えているからです。そのため、この2つのステークホルダーに焦点を当てることで、間接的に他のステークホルダーをケアすることができると考えています。
価値判断の基準: AI/IoT/ITとの親和性があり、株主価値や人間の幸せの観点から「価値判断基準」を提供する体系的で一貫性のある経営理念の導入に取り組むことで、投資先企業の株主価値向上を実現できると考えています。簡単なことではありませんが、この目標を達成すれば、経営トップがAIの考えを持っていない多くの上場企業の価値を向上させることができると考えています。AIがトップにとっては単なるブラックボックスとなり、AIエンジニアとCEOの間に大きなコミュニケーションギャップが存在する場合があります。そのような場合、AIに関連する経営判断は、時間とお金を無駄にしているだけで、メリットがありません。このような事態を避けるためには、数学的な評価理論に基づいて、AI/IT/ITとの親和性が高く、株主価値との論理的な関係性が強い、体系的・全体的・一貫性のある経営概念を導入することが必要であると考えています。
上記の条件を満たす経営コンセプトを確立するために、GCCマネジメントのコンサルティングフレームワークを開発しました。
3つの基本的な要素: GCCは、企業の価値を創造する3つの基本要素(Growth, Connection, Confidence)を表しています。私たちは、大きな成長を遂げ、すべてのステークホルダーとのつながりを持ち、すべてのステークホルダーから大きな信頼を得られる企業こそが、より高い価値創造と従業員の幸福を実現し、社会の向上に貢献できると考えています。この3つの要素に貢献するためには、AIを計画的に導入していく必要があると考えています。次のスライドでは、GCC が価値創造にどのように関係しているかを説明します。
株主価値に結びつける方法: この図は、GCCと株主価値がどのように結びついているかを示しています。
まずは、成長です。株主価値で言えば、成長は会社の売上高の伸びを表しています。企業の価値を創造するためには、売上高の成長が最も重要な要素の一つであることは、誰もが同意するところだと考えています。第二に、繋がりです。繋がりというのは、会社運営のあらゆるところでで目にするものです。企業が顧客との良好な繋がり、従業員との良好な繋がり、サプライヤーとの良好な繋がり、社会との良好な繋がりを持っている場合、企業はより多くの価値を創造するため運営の効率化に努めており、高い収益性を持っていると言えます。最後は安心です。運営に関連するリスクを減らし、ガバナンスと財務管理を改善することで、信頼性を高めることができます。他社よりもリスクが少ない企業であれば、その企業は他社よりも高い価値を持っていると言えます。金融論における基本的な理論です。
これで、GCCの概念が株主価値と密接な関係があるということを理解していただけたかと思います。しかし、株主価値の概念は誰もが簡単に理解できるものではないと考えています。一方、人間の幸せと密接な関係にある経営概念は、誰にでもわかりやすいものだと考えています。そして、そのような経営理念が、AIが企業価値向上と従業員の幸福度向上の両方にどのように貢献するかをマッピングすることで、AIが会社にどのようにメリットをもたらすかについて理解が深まると思います。
社員の幸せにつなげる方法: この図は、GCCが社員の幸せとどのように結びついているかを示しています。
マズローの「欲求階段説」を参考にしています。マズローの欲求階段説とは、生理的、安全、愛と帰属、自尊心、および自己実現を基準とした人間のニーズモデルで構成される、心理学の動機付け理論です。
第一に、成長は自己実現ニーズと関係しています。なぜなら高成長企業は、社員一人ひとりに意味のある成長業務を割り当てることで、社員の自己実現ニーズを満たすことができるからです。第二に繋がりです。繋がりは、適切な従業員の関係、リーダーシップ、社会との繋がりを介して尊重、帰属、愛のニーズを満たします。第三に安心です。安心は、適正な訓練と経済的な安全環境のもとで、安全性と生理的なニーズを満たします。
GCCのコンセプトは従業員の幸せと密接に関係しているので、誰にでも理解しやすく、受け入れられやすいということを 理解していただけたかと思います。
ここでは、GCCのコンセプトが株主価値と従業員の幸福の両方にどのように関係しているかを説明する全体像を示しています。GCCコンセプトでは、シンプルでわかりやすい3つの要素で株主価値と従業員の幸せを体系化することができます。
GCC ManagementTMが意思決定にどのように機能するのかを最適化問題として定式化して説明します。 t 年度の株主価値付加価値(SVA) 1、すなわち経済的利益は以下のように定義することができます。
従業員の幸福度付加価値は以下のように定義することができます。
企業の経営行動は以下のように定義することができます。
企業の付加価値の総計は、以下のように定義することができます。
ここから、企業の目標を次のように定式化することができます。
各AIツールのゴール関数とsk0i,sk1i,sk2i,sk3i,ek0i,ek1i,ek2iの関係がわかれば、企業のトータルバリューを最大化するためのゴール判定基準を導入することができます。このような因果関係の推論は、GCCマネジメントTMの考え方を導入することで体系的に分析することができます。
GCC ManangementTMと適切なAIツールをどのように連携させているのかを説明したいと思います。私達は経営課題を次の図のようなフレームワークで分類しています。:
フレームワークの例として、2019年5月末の株式会社Scalaの株主価値創造と従業員価値創造の仕組みを説明した図をご紹介します。
GCC経営がどのように企業を評価するのかを示すサンプルレポートです。私達は日本の上場企業約3,000社の財務データを毎日更新し、数秒で以下のレポートを作成するシステムを開発しました。
このフレームワークを通じて、株主価値や従業員の幸福度を向上させるために、どの部分が重要な課題であるかを体系的に把握することができます。課題の特定後、データ管理構造である「DIKWピラミッド」を分析します。また、分析を通じて下図のように各課題のDIKWの状況に応じた適切なAIツールを特定することができます。
どのAIツールをSaaSで実装すべきかを特定した上で、以下のようにScala社とシステム全体を開発しました。
AIを活用したエンゲージメントファンドへの挑戦をご説明しました。これはあくまでもトライであり、実際のエンゲージメント活動を通して、さらにアイデアと実践を積み重ねていかなければなりません。幸いなことに、私たちのアプローチに興味を持っていただいた企業はすでに10社ほど見つかっています。近いうちにエンゲージ活動の成果をご報告できればと思います。