JPRレポート
国際会計基準(IFRS)は何故導入されているのか?哲学不在の議論にふりまわされないために! ジェイフェニックスリサーチが考えるIFRSの哲学にもとづいた導入アプローチ
国際会計基準(IFRS)は、どのような哲学で、何を達成しようとしているのだろうか?
この答えを念頭に議論がなされなければ、話がぶれてしまい、不毛な議論に陥るはめになる。
何を達成しようとしているのかは、割と簡単な議論である。
国際会計基準は、グローバルにみて誰もが上場企業を比較しやすいように、共通のものさしで財務諸表を作成することを達成しようとしている。
この点は、割りと理解が進んでいると思われる。 しかし、どのような哲学に基づいてそれを達成しようとしているのだろうか?
哲学については必ずしも十分な理解がなされないまま議論されているように見える。 IFRSは二つの哲学に基づいている。
第一に株主重視である。
誰もが上場企業を比較しやすいようにしたい、というときに、「誰」とはいったい「誰」なのか?
この答えをIFRSでは株主にしている。
なぜ、株主なんだろうか?従業員や債権者、政府関係者は無視していいのだろうか?
株主が重視されているのは、株主はすてべのステークホルダーへの支払をおこなってなおかつ残りがあった場合に利益を得ることができるからである。
つまり企業を取り巻く全てのお金の流れに関心があることになる。
一方、従業員であれば、給料がもらえれば良いし、債権者は元本が保全されて、利払いがスケジュールどおり支払われればよい。例えば、税金がどうなるのか、などは余り関心がない。
それに対して、株主は、給与や、利払い、元本の支払、税金の支払などが行われて、なおお金が残っていればやっと利益を得ることができる。
このように全てのお金の流れに必然的に関心のある株主に対して分かりやすい情報を提供すれば、他の利害関係者の要求も大抵は満たすだろう、という考えがIFRSにあるのである。
第二の哲学は、プロフェッショナル主義である。
株主を重視することはわかったが、いったいどの程度の知識を持っているものを想定しているのか、という問題がある。IFRSでは株式分析において訓練を受けたプロフェッショナルな投資家を想定している。
なぜかとい言えば、それらが理解すれば、必ず、素人にも分かりやすく解説する職業が生まれ、結局は全ての株主に情報が行き渡るという考え方である。
訓練を受けたプロフェッショナルな投資家とは、機関投資家や、証券アナリストといったものを想定すればよいだろう。
この二つの哲学をIFRSを導入するときに、企業は忘れてはならない。
例えばであるが、家具の販売店で店頭においてある見本の在庫が1年間売れなかったとする。一年売れないのであるから、毀損させるべきだとの考え方が出てくるかもしれない。
しかし、証券アナリストであれば、その見本は、むしろ客寄せのための設備であり、客寄せのために価値を維持しているとの考えをとることができる。
そう考えれば、一律他の在庫と同じように毀損させる必要はない、との議論を展開することが可能になる。
証券アナリストであれば、どう考えるのか、証券アナリストにとって分かりやすいように開示するにはどうすればよいのか?という判断軸をもって考えればIFRS導入がより円滑になるだろう。
IFRSがプロフェッショナルな株式投資家のための情報開示を行うことを哲学としているから、それはあまりに当たり前の議論である。
しかし、そのような哲学を踏まえない議論があまりにも多すぎる。 哲学のない議論は、議論の軸がぶれて混乱を巻き起こすものである。
哲学を理解しないでIFRS導入を行うことは、現場に混乱をもたらす可能性がある。
例えば、2011年2月4日付日経新聞15面で「IFRSと日本」シリーズの記事の中で、「比較可能性に課題」ということが指摘されている。確かにそう言われてみれば問題だと思うかもしれない。しかし、哲学に照らしてみれば、厳密な比較可能性については、プロフェッショナルな投資家やアナリストが分析できるのであれば、重要な問題ではない、ということになろう。一方で、「二者択一ではなく投資家視点で」という指摘もなされているが、これは哲学にそった議論と言える。厳密にいえば、プロフェッショナル投資家にとって有用な情報開示という視点で日本市場に合ったもの、また、企業の形態に合ったものを導入するべき、ということになろう(以上の段落は2011/2/4に加筆)。
ジェイフェニックスリサーチでは、証券アナリストの視点で企業に長年アドバイスを行って来た。そのようなノウハウを駆使して、是非とも企業の円滑なIFRS導入を支援していきたいと考えている。
IFRSで証券アナリスト目線から見れば、一番大きな問題は減損すべきかどうか、期間利益とコストをどう対応させるのかという点が重要だと思っている。是非これまで培ってきた証券アナリスト的分析の視点を用いて、そう言った疑問に答えていきたいと思う。
詳細な支援メニューは以下をご覧ください。
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