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JPRレポート

インベスターズリレーションにおける
全体最適と部分最適のジレンマへの対処法
2011/2/12
 

 

◆ストーリーとしての競争戦略の重要性

昨年5月に発行されて以来14刷の増刷となっている「ストーリーとしての競争戦略」楠木建著をよんでいるが、その内容はインベスターズリレーション(IR)を考える上で極めて参考になる。

 
IRとして特に参考になる点は、戦略は全体像のストーリーが重要であり、部分的には最適ではない戦略を追求することが、全体最適を目指すうえでは不可欠な場合があることである、という指摘である。
 
◆スターバックスの全体最適と部分最適のジレンマ
 
スターバックスがなぜ直営なのか、という点について論じている点が特に参考になる。 資本効率を考えれば、直営でなくフランチャイズを追求するべきであり、直営の方針については、外部の関係者から疑問視する声が上がったという。
 
おそらく資金の出し手である機関投資家からも批判があったのではないかと推測される。 しかし、直営店経営は、全体最適を考えると、スターバックスにとっては不可欠な要素であった。
 
 スターバックスは、ゆっくりとくつろげるスペースの提供が戦略の中心となるコンセプトであり、相対的に最も効果が高いとされたターゲットが都心の忙しいビジネスマンであった。忙しいビジネスマンを当初のターゲットとしてがゆっくりと休むというコンセプトを追求するためには都心の一等地を確保すること不可欠であり、それはフランチャイズ経営では難しいため直営にしたという。
 
日本でもまずは、丸の内や赤坂、六本木、といった多忙なビジネスマンが多い場所に出店していった。また、早期にブランドを高め収益化するためにも、ドミナント戦略をとる必要があった。 当然リスクがあるが、全体的な最適の観点から場所重視の出店計画を追求するためには、直営店で行うしかない、ということになる。フランチャイズでは、時間がかかり、また、適切な場所に集中出店することができないリスクがある。
 
結果は、成功し、ブランドを確立させ、その結果、相対的に忙しい人々の割合が少ない町でも、「ゆっくり休める場所」として認知され、より大きなエリアに出店し大きく拡大することが可能となった。
 
◆外部利害関係者への情報提供の課題:全体像に対する理解不足
 
ここで重要なのは、全体像を理解しない外部利害関係者は、部分的には非効率なことを追求することに対して批判するということである。新しいビジネスモデルであればなおさらである。
 
スターバックスのIRの内容は詳細に調べていないが、外部利害関係者から批判されたということは、IRにおいて、スターバックスの全体のストーリーの認知が不徹底であったのではないかと推測される。新しいビジネスモデルであれば、そういった批判は当然であり、それに対して準備は十分であったのだろうか?
 
◆理想のIRとは?全体最適に対する共感を呼ぶロジカルな説明
 
後付の議論かもしれないが、最初から、よく考えられたインベスターズリレーションにより、全体像の姿を見せて、部分的には最適ではない戦略をなぜとるべきなのか、詳細な情報発信をして、外部関係者もその戦略に共感させることが理想と言える。
 
そうすれば、外部からの批判もすくなくなり、より円滑な事業展開や資金調達が可能になったのではないだろうか? もちろん、全体最適を理解してもらうことはそう簡単なことではないだろう。しかし、上場している企業であれば、外部利害関係者に対する説明について努力をし続けることについては、優れた企業により多くの経営資源が配分されるという意味で、是非あきらめないでほしいと思う。
 
◆JPRが目指す理想のIR
 
ジェイ・フェニックス・リサーチ(JPR)では、まさに全体最適を重視したIRのアドバイス、企業調査を心掛けているつもりだ。理論的に全体的最適がなぜ優れているているのかロジックをもって分析していくことを重視している。その上で外部利害関係者から見て批判されるべき点を予め洗い出して、それをIRで詳細に説明することが重要である。
 
スターバックスのように、外部の利害関係者から批判されるリスクをなるべく少なくさせるように、すぐれた全体最適をもつ企業の資金調達、適切な株価形成に寄与すべく、弊社として今後もIRコンサルティング、アドバイス、調査活動能力を向上させていきたいと思う。

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